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最高裁判所第三小法廷 昭和58年(あ)753号 決定 1983年9月13日

主文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中一〇日を本刑に算入する。

理由

被告人本人及び弁護人戸田宗孝の各上告趣意は、いずれも、原判決が被告人の犯行当時の精神状態に関する鑑定結果を否定し被告人の刑事責任能力を肯定したことは重大な事実誤認であるというのであって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

なお、被告人の精神状態が刑法三九条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であって専ら裁判所に委ねられるべき問題であることはもとより、その前提となる生物学的、心理学的要素についても、右法律判断との関係で究極的には裁判所の評価に委ねられるべき問題であるところ、記録によれば、本件犯行当時被告人がその述べているような幻聴に襲われたということは甚だ疑わしいとしてその刑事責任能力を肯定した原審の判断は、正当として是認することができる。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項但書、刑法二一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 横井大三 裁判官 伊藤正己 裁判官 木戸口久治 裁判官 安岡滿彦)

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